整骨院に通院した場合の慰謝料(通院慰謝料)の計算例
交通事故に遭ったとき、怪我を治療するために、病院の他に整骨院に通院することもあるかと思います。整骨院では、病院で受けられるような検査や治療は受けられませんが、マッサージ等で怪我の痛みを除去する緩和治療を受けることができます。通院による精神的苦痛に対して支払われる慰謝料として、通院慰謝料があります。
整骨院に通院した日数については、病院の医師から指示があった等、整骨院での治療の必要性がある場合には、通院慰謝料の算定の基礎となる実通院日数に含めることができます。基本的には、整骨院の通院も認められれば、病院に通院した場合と計算方法は変わりません。例を挙げて、計算方法を以下で説明していきます。
自賠責基準
自賠責基準での通院慰謝料は、
- ①通院期間
- ②実通院日数×2
を比較して少ない方の日数に、4200円をかけた金額になります。なお、通院を開始した日から治癒・症状固定した日までの期間を「通院期間」と言い、1ヶ月=30日とします。例として、「通院期間6ヶ月(180日)・実通院日数90日」の場合を計算してみましょう。
- ①通院期間⇒180日
- ②実通院日数×2⇒90日×2⇒180日
①・②ともに日数は180日であるため、180日に4200円をかけます。⇒180日×4200円=75万6000円が、今回の例における通院慰謝料の金額になります。
ただし、自賠責保険は、保険金額に120万円の上限があり、治療費、休業損害、通院交通費、慰謝料、その他費用を含めて120万円になりますので、治療費がかさむと、計算ほどは通院慰謝料を獲得できません。
弁護士基準
弁護士基準での通院慰謝料の金額は、通院期間に基づき、適用して計算します。
また、むちうち症で他覚所見がない場合等は、通院期間に基づき、計算します。
整骨院への通院で請求できる補償の種類
交通事故による怪我の治療のため、整骨院に通院した場合、通院慰謝料とは別に、実際にかかった治療費を請求できます。
また、通院に要した交通費(通院交通費)を請求でき、被害者が子供の場合や歩行が困難である方の場合等、誰かに付き添ってもらうことが必要であると認められる場合は、誰かに付き添ってもらった費用として、通院付添費も請求することができます。その他、通院のため仕事を休み、収入が減った場合には、休業損害を請求できます。
整骨院の治療費を慰謝料請求を行うために注意するポイント
整骨院に通院する場合、事前に注意をしておかないと、通院慰謝料や治療費を支払ってもらえない、後遺障害等級認定を受けられないといったトラブルが後に生じる可能性があります。こうしたトラブルを防ぐために、整骨院へ通院する際の注意点を、以下で説明していきます。
病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
整骨院に通院する際は、病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院に通院することについて、了承を得ておいた方が良いです。医師によっては、整骨院への通院に対して好意的な気持ちを持たない場合もあり、医師に黙って整骨院に通院してしまうと、トラブルになる可能性があります。医師との関係が良好でないと、保険会社から治療費の打ち切り・症状固定の打診をされた際や後遺障害等級認定の際等に、症状について理解がなされず、不利になる可能性が高まってしまいます。
また、病院の医師に、診断書に「柔道整復師(=整骨院で施術をする専門家)による施術が有効」である旨を書いてもらえば、整骨院での治療の必要性が認められ、保険会社から整骨院に通院したことによって生じた通院慰謝料や治療費の支払いを断られるというトラブルを防ぐことができ、示談交渉を有利に進められます。
病院(整形外科)にも通院する
整骨院に通院する際は、初めから整骨院に通い、整骨院のみに通院するのではなく、初めは病院(整形外科)に行き、病院にも通院しておきましょう。先に述べたように、整骨院では、病院で受けられるような検査や治療は受けられません。
また、診断書は、整骨院の柔道整復師には書くことができず、病院の医師のみが書くことができます。初めから整骨院に通い、整骨院のみに通院してしまうと、検査結果が残らず、後遺障害等級認定の際に必要な後遺障害診断書が書いてもらえないため、後遺障害等級認定を受けることができなくなってしまいます。
保険が適用される治療かどうかを確認する
整骨院に通院する際は、保険が適用される治療かどうかを確認した方が良いです。保険適用がない治療の場合、保険会社に治療費や通院交通費等の財産的損害を請求した際に、治療が不当に高額であると判断され、全額の請求は認められない可能性があるためです。
また、「整骨院」に似ていますが、「整体院(カイロプラクティック)」に通院しても、通院慰謝料や治療費は支払われませんので、注意してください。整体院(カイロプラクティック)は、整骨院の柔道整復師といった国家資格は必要なく、無資格で開業することができるため、治療とは認められず、保険適用はなく、通院慰謝料や治療費は支払われません。